不正取引を題材にこれだけの小説が書けるのか
公正取引委員会を舞台に
1つの大きな事件を軸にし
複数の事件が交差する
非常に泥臭い人間関係や感情が描かれているが
登場人物の個性が重みを感じさせず
痛快に最後まで読み切れる作品だった
作者は弁護士として働いていたため
法律にも詳しく
裏打ちされた確かな描写が
リアリティを醸成している
だからといって
難しい言葉が多用されておらず
非常に一般的な言葉で表現されていて
読みやすいのも素晴らしい
「不正を正す」
というのが本書のテーマだが
その不正は
「誰にとって不正なのか」
状況や立場によって
人の価値観によって
「正義」は異なる
そもそも正義とは何なのか
だからこそ法律があるのだろう
でも「法律で裁けない正義」
はどうしたらよいのか
正義感を持って意見を言ってくれる人に
「自分は違う」
と意義を唱えることは勇気がいる
自分が意図していなくても
「正義感を振りかざしている」
とみられることもある
他者から見られる自分
人のことを気にしすぎる必要や
良い人になる必要はないが
「自身の言動」によって
他者にどのような「影響」を与えているのか
それを知り
「自分」を正しく理解することが
「自分」を守ることにつながる